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古代中国から伝わる交接の道『医心方・房内篇』

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現存する我が国最古の医学書シリーズである『医心方』。そのシリーズの一つに構成されている、性愛の書『房内篇※1』について、紹介していきます。

 

医心方については、前回の記事をご覧ください

 

最初に知っておいていただきたいのは、本書は「性愛の書」と言われていますが、性交によって快楽を得るためのノウハウではありません

 

書かれているのは

  • 交接の道とその具体的な性技やタブー
  • その道に従った場合と、従わなかった場合どうなるか
  • 性にまつわる悩みと解決方法

といった内容です。

 

今回は、繰り返し登場する教えを取り上げながら、本書が説く房中術の全体像についてまとめていきます。

 

なお、具体的な性技についてはほぼ取り上げませんので、詳しく知りたい方は直接本書をご覧ください。学術的に貴重な図書ですので、多くの図書館に置いてあると思います。

 

 

ポイント解説

こちらの問答がよくまとまっているので、まずはご覧ください。

『玉房秘决』にいう、
黄帝がいった。「そもそも陰陽の道にのっとった交接とは、どのようなものか」と。

 

素女は次のように答えた。

「交接の道には、本来、形状がございます。男性が気をもたらせばそれによって女性の病気は除かれます。心の底から(交接によって)楽しめば、気力が増加して旺盛になります。交接の道を知らずに行う場合はだんだん衰弱していきます。

その道について知ろうとするならば心を平らかにして気持ちを和ませ、精神を充実させねばなりません。そうしますと寒くも暑くもなく、満腹感やひもじさもございません。心身が正しく定まれば性情は必ずゆるやかにひろがります。

そうなってから滑らかにゆっくりと入れて、徐々に動かし、出したり入れたりするのを少なくしようとなさいませ。たがうことのないよう用心なさいますように。女性が先に歓喜すれば、男性は衰えないのでございます」と。

第四章 心の融合 p62-63

古代中国の王「黄帝」と、房中術に詳しい女仙素女」のやりとりです。

 『玉房秘决』は引用文献のこと。 

 

いくつか重要なポイントあるので解説していきます。

まず交接の道には

  • 性交によって陰陽(男女)の気の調和を図ろうとする

陰陽思想が基にあり

  • 道理にのっとって交接すると、女性は病気が除かれ、男性は衰えない
  • 道理からはずれると、男女ともに健康を損なう

という考え方が根底にあります。

 

 

そして陰陽を調和させるためのポイントとして

  • 心の融合
  • 女性を先に歓喜させる(丁寧な前戯)
  • 男性のゆっくりとした動き(男性の心得)

が重要だと指導しています。

 

さらに「たがう(間違える)ことないよう」と、念を押しています。

 

それぞれのポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。

 

 

交接の道

陰陽思想とは、相反する二つの陰と陽の気が万物の根源であり、相互に作用し合って万物を形成するという考え方のこと※2

 

その考えに基づいた交接の道は、本書の様々なところに登場します。

いくつか紹介します。 

 

天地は交わり合う道を心得ているために終わることがない。人は交接の道を間違えるために次第に寿命を損失し、若死することがあるのだ。だから陰陽の術をわきまえるのは、不死の道につながるのである。

第一章 道理にかなった性交 p9

 

男女の道を良く理解しておりますと、あらゆる楽しさを味わうことができるのです。でもこれをわきまえていない人は必ず短命となり、とうてい喜びや楽しみを味わうことなどできません。

第一章 道理にかなった性交 p8

 

天地のもとに存在するものすべてのものは、陰陽の存在によって活動しております。陽(男性)は陰(女性)を得ることによって変化し、陰は陽にめぐりあってそれを受容するのです。

第一章 道理にかなった性交 p23

 

天の法則にのっとり、地の形象にかたどられた陰のきまりと陽のおきてがある。その意味するところを深く理解すれば、それによって生まれながらの天性を養って寿命を延ばすことができる。その真理をなおざりにする者は、中枢神経系統を損傷し、短命になる。

第一章 道理にかなった性交 p28

 

性欲の赴くまま交接するのではなく、天地の法則にのっとり、男女それぞれのおきてを理解するように、と書かれています。

交接の道は「交接の術」「男女の道」
陰陽は「男女」「天地」とも表現されています。

 

そして、交接の道をわきまえることは、喜びや楽しみとなるだけでなく、寿命を伸ばす、不死の道につながる。一方で、性欲の赴くまますると短命になる、ともあります。

 

 

健康や不老不死への願いは、現代よりも遥かに切実であったのでしょう。

また、つい道から外れてしまう人間の性(サガ)もあったのでしょう。

 

交接の道を守ることや、間違えてはいけないと、念押しするように繰り返し書かれていますね。

 

 

 

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陰陽調和のために

心の融合

次の問答には、心の融合が、陰陽を調和させるため大切であると書かれています。

 

『玄女経』にいう、
黄帝がいった。
「交接のとき女性が悦ばなかったり、その本体が動かず、愛液も出てこないで、玉茎も小さくて弱く勢いがないのは、何が原因でそうなるか」と。

 

玄女がいうには、
「陰陽は互いに感じ合ってこそ、それに応えるのでございます。ですから陰は陽を得なければ喜びませんし、陽は陰を得なければ勃起できません。男性が交接を望んでいるのに女性が一緒に楽しもうとしなかったり、女性が交接したがっているのに男性がその気にならない場合は両者の心が和まないため、精気を感じることができません。そのうえ一方的に急に抜去したり俄かに挿入したりといった乱暴な扱いをすれば、とても愛や歓楽を味わうことなどできません。

第四章 心の融合 p69−70

「心の融合」として説いているのは、お互いに心から打ちとけて睦み合い、求めあうことの大切さ。両者の心が和まないのに、一方的に従わせることはしてはいけないと、正しています。

 

男性が女性を求め、女性が男性を求めて互いの情感が一致すれば、共に歓喜を味わうことができます。

 

セックスの悩みとそれに対する答えは、古代であろうと王であろうと、現代となんら変わらず、普遍的なものと言えるのかもしれません。

 

 

丁寧な前戯

そして、心の融合と同じくらい、前戯の重要性も説いています。

そもそも女性を操縦する道は、まず徐々に相手を喜ばせる前技をしようとつとめ、心を和ませてしばらくのあいだ女性に快感を味わせてから交接すべきである。

第四章 心の融合 p67

 

その具体的な手法については

おおむねその深浅、遅速、撥東捩西(はつとうれいせい:東にはね、西にねじる)などをどのようにすべきかということについては、さまざまな意見があり、方法については数えきれないほどの糸口があるだろう。

第四章 心の融合 p59

と、様々あると述べています。

が特別に変わった方法があるわけではなく

 

ただ縦容(しょうよう:ゆったりと落ち着いているさま)として安らぎ、ゆるやかに和んでいくのが最も大切である。女性の臍下丹田をもてあそび、女性の唇を求め、子宮を指で深くおしたり、小さく揺すったりして女性の気分を高めよ。女性が男性の陽気を感じてくると、その兆候が女性に現れる。

第二章 男性のための房内術 p43−44

ゆったりとリラックスして、キスをしたり、撫でたり、押したり、揺すったり…

 

すると女性が感じ出す。

女性はあらゆるなまめかしい姿態をくりひろげているうちに、ついに思慮を忘れ羞恥心も消えてしまう。

 

そうなったら男性は女性の左手で男性の玉茎を把(とら)えさせ、女性の玉門を愛撫する。かくして男性は陰の気を感じる。すると玉茎が振動して上を向き、高く抜きんでて聳(そび)えたつ。この孤峰のように立派な男の姿をとおく臨めば、女性は陽の気を感じて丹穴に精液が流れる。それは小さな流れのように下り、奥深くひそんでいる泉から溢れ出して、深い谷間を流れ行くようである。これはつまり、陰陽が激しく感激してそのようになるのであって、人為的なものではない。ことここに至ったならば、交接すべきである。

第四章 心の融合 p59

男性は陰の気を感じ、女性は陽の気を感じたら、交接のタイミング。

 

そして、交接の重要なポイントは

(玉茎が)まだ弱いうちにこれを挿入し、堅く強くなったらさっと退ける。進んだり退くその間隔は疎[まだ]らに、のろのろとするよう心掛がけること。また高い位置から投げうつように乱暴に(交接)してはならない。(そんなことをすると)五臓がひっくりかえり、絡脈(経路や経脈)が傷ついたり切れたりしてあらゆる病気を発生させるからである。

第四章 心の融合 p67−68

 決して乱暴にしてはならないと説いています。

 

 

キスの重要性

また、キスの描写もいくつかあったので、抜粋します。

五臓の精液(エキス)は必ず舌から湧き出す。これが仙人の赤松子(せきしょうし)がいうところの玉漿(ぎょくしょう)で、それによって断穀してもさしつかえないほどのものである。性交するときには、キスして女性の舌液(玉漿)や唾をたくさん吸うと、胃の中が豁然(かつぜん:もたれていた胃がすっきりするさま)とし、まるで湯薬を服用したようになる。そして消渇はただちに癒り、逆気はそれによって下り、皮膚はいきいきと光沢が出て、姿はまるで処女のようになる。

第二章 男性のための房内術 p43−44

 

男性は女性の下唇を口に含み、女性は男性の上唇を含んで同時に吸って、お互いの玉漿むさぼり合う。

第四章 心の融合 p59

 

それから口を鳴らせて舌を嗍(す)い 、あるいは上から玉面(女性の美しい顔、表情)を観(み)たり、

第五章 前戯について p74

 

男性はその脚の間に入って女性の口を含み、その舌を吸いながら

第五章 前戯について p80

 

昆石(夫を待ち望む女陰)のかたわらまで深く入れて往来させながら、唇は女性の唇に当ててその気を吸い、九九の道(九浅一深の性技のことか)を行います。

第五章 前戯について p82

 

舌から湧き出す精液や気には、胃をすっきりさせたり、若返り効果があると考えられており、キスをすることで意識的にそれを取り込もうとしたようです。

 

 

男性の心得

もう一つのポイント、男性の心得としては、前回の記事に登場した「還精補脳」という考え方が重要になってきます。こちらは、次回の記事にまとめます。

 

(続きの記事はこちら)

 

引用・参考文献
※1)丹波 康頼. 医心方. 槇 佐知子訳. 筑摩書房, 2004, (房内篇, 28).
※2)"陰陽". 角川古語大辞典. KADOKAWA. ジャパンナレッジ, https://japanknowledge.com/, ( 参照 2021-03-20 )